子供の頃の記憶を辿ってみて、始めて建築を意識したとハッキリ思い出せるのは白黒テレビの画面で観た東京オリンピックの中継に出てきた代々木体育館でした。田舎に住んでた私は普通の家か四角いビルしか観たことがなかったのでほんとに驚き、同時に建築家という存在を知りました。たぶんその時の感動があったから今日の自分をあるのかもしれません。
設計者の世界的高名な丹下健三先生(2005年没)の51歳の作品です。同時期にやはり傑作の目白の「東京カテドラル聖マリア大聖堂」もあります。ここも大好きな建築で私が若かかりし頃結婚式をしたところでもあります。学生の頃からこの体育館はなにかにつけてはわざわざ観にいきました。それが今ではほぼ毎日犬の散歩でその前を歩いています。もしかしたらこれも運命でしょうか。朝夕、四季折々、いつ観ても、どこから観ても飽きのこないほんとに奥深い建築です。
よく設計は「意匠」と「構造」の闘いだなんていいますが、この体育館はその二つがみごとに融合してできたフォルムを持っています。現代のコンピュータで解析すればどんなアクロバティックなデザインの建築も実現可能です。しかしほんとうに美しいデザインというのは人間がDNAの中にずーと刷り込まれているバランスにマッチしてるデザインだと思います。例えばこの重さを支えるにはこれくらいの太さの柱、梁をこんなに飛ばすならこれくらいの梁巾とか。でも最近の教育は最初からコンピュータ頼みだから、そんなバランス感覚もなくなりつつあるとか。そういう時代だからただ出てきた数値だけで判断して、いろんな偽装事件に発展してしまうんでしょうね。私はそんな「本能のバランス感覚」を最後のひとりになるまで大事にしたいと思います。
しかしこの体育館、今日でもよく補修工事しています。戦後の物資不足と工期のなかったせいで新築当初より雨漏りがたえなかったそうです。それでも日本の建築史の金字塔です。私も来年同じ歳になります。とにかく雨漏りはしないようにと日々悪戦苦闘してる自分はいったい、、、とにかくまだまだ頑張って、すてきな建物を残したいものです(笑)。
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